せりふ 2

「舐めとってあげる。全部、全部、ぼくが、綺麗にするね。きみは丁寧に震えているけど、安心して。誰も、誰にも触れられないくらい、舐めとってあげるから。きみはしっかり急いでいるけど、時間に任せっきりだね。そのときにしかない唯一の煌めきは、緻密な計画と、行き来する生ものによって、偶然と隣り合わせで、育まれていて。『かなしいけど、すきだよ』それでいいよ。そのままでいいよ。分かります。ぼくは、ぼくの形は、ちゃんと今に存在しているはずで、周りの人間たちにも、認識してもらえているみたいで、それは、すごく分かるんです。でも、いつも、ぼくの中身は、どこかへ旅していて、一向に、一緒になれないんです。ぼくが知っていることは、なんの役にも立たないことばかりで、むしろ、中身のぼくは、形のぼくを嫌ってしまう。交わらないことに、恐怖を覚え始めました。上と下で、お互いがそれぞれを進んでいるだけ。記憶は、どこにも行ってくれないままです。全部いらないのに、ぜんぶ欲しくて、ぼくはそれでも、生きてしまう。突き落とされた想いは、あたたかいものを疑って、繰り返される日々の中の、微かな何かを、吐き出すようになりました。わかります。外側と思っていた線は、実はしっかり、内側に引かれていました。暗いだけの夜がすき。ぼくはなにも望まないし、食べてあげる、おいで、おいしそうな君。どんな味がするのかな。でもぼくは味付けはしないし、煮たり焼いたりしないから。安心していいよ、君はなにもしないでいいから、そこに居てくれたら、それだけでいいから。あとは僕が、ちゃんと味わうからね、すべて飲み込んで、僕の中に君がうまれたら、一緒に眠ろうね。わかります。手のひらが生ぬるくて、中身からは言葉が落ちていくだけで、きみも僕も、繋がっている気がします。ありがとう。」