記録

僕は窓を、窓の中の、いや、窓の外側の景色を眺めながら、揺れる木の葉を妬みながら、よだれを垂らしていました、いたと思います、目の前の人に、話しかけられましたが、無視していました、僕、ずっと、無視していました、すると、目の前の人が、勝手にうごめきだしたのです、電車が通る音と、同じような、いや、似たような感じがしました、床が揺れました、窓の外側の景色が、僕を見ていました、彼らは、一斉に、指を刺してきました、僕の頭に、何本もの指が、刺さっていました、目に見えるだけで、痛くもなく、痒くもなかったです、その頃には、僕のよだれは、ちょうど腰あたりの高さにまで、溜まっていました、色はないです、こだわりも、特にありません、生き延びるために食べる、だけでなので、知識や経験は、時に、邪魔になります、差し伸べられた手を折ることが得意、相手が今なにをしてほしいか想像することが得意、らしさ、が苦しいとき、気持ちいいだけの言葉が、とても、嫌い、ふたりで、ひとつ同士で、机に肘をつきながら、最後の晩餐にしよう、あのとき欲しかったものが手に入っても、僕の世界が動くことはなかったけど、此処が今なら、それが良い